2005年7月第2週

 博多では、今週いよいよ山笠の追い山が行われます。詳しく説明していると長くなっちゃうんで、詳しく知りたい人は、復刊なった、長谷川法世さんの漫画『博多っ子純情』でも読んで下さい! NHKで『走らんか!』というタイトルで朝の連続テレビ小説にもなりましたよね。菅野美穂が出てましたっけ。そうそう、映画にもなってましたね。

 7月に入って2週間、中洲近辺では毎夜、法被[はっぴ]姿の男たちが集団で飲み歩いてますが(先週の土曜の夜には、ふんどし姿でお尻丸出しの男たちが掛け声を掛け合いながら次から次へとバーや飲み屋に入っては出て来て、堂々と街中を歩いてました! ちょっと目のやり場に困る女の人もいるんじゃないかと思うんですが、あれって、店で祝い酒かなんか貰ってるんですかねぇ?)、その山笠のクライマックス、追い山は、15日の金曜の早朝でして(4時59分から一番の舁き山が走り出します)、はたして起きて観に行けるかどうか……いや、行きますよぉ! 何しろ、福岡に来てから、毎年行きたかったのに行けなかったお祭りですから! チャリンコで、広い大博通りに観に行こうと思ってます。祭り好きの博多もんの中でも、いっちゃん(一番)のぼせもん(熱中して突っ走る人のこと)の祭りだそうですしね。私も、のぼせもんといえばのぼせもんですから。追い山の報告は来週に!

 さて、先週は、予告通り、福岡アジア映画祭2005で韓国映画を3本観て来ました! 本当は4本観る予定だったんですが、『最後のオオカミ』は観逃してしまいました。というより、金曜日の夜、『公共の敵2』を観て、うれしくて家で韓国ソジュ[焼酎]を飲み過ぎちゃって、二日酔いというより疲労困憊で、土曜日の朝、しっかり寝坊してしまったんです。普段は目覚ましのアラームなんかなくても、いくら前の晩飲み過ぎても、7時にはちゃんと目が覚めるんですけどね。この日は、目が覚めたら10時過ぎでした。で、雨も降ってたので自転車で行くことも出来ず、1本目の『最後のオオカミ』は泣く泣く諦め、2時からイムズホールで行われる演劇『東京物語』を最初にして、その後、2本の韓国映画を観ることにしたんです。

 『東京物語』の話は後にして、4時半から観た『回し蹴り』ですが、先週、予感的に「一般公開したらひょっとして大ヒットするかもしれないぐらいおもしろい、かもしれない」と書きましたが、いやぁ、私のこういう予感はズバリ的中しますねぇ! もう、最高でした! いわゆる“いい映画”というわけじゃないんですが、今年観た韓国映画の中では、おそらく一番好きな映画です! 物語は、高校の弱小テコンドー部に不良たちが入り、大会を勝ち抜いていくと共に、不良たちも成長していくという、お決まりの正統派スポ根青春ドラマ的ではあるんですが(話はもうちょっと複雑ですが)、登場人物たちがそれぞれ個性的で、『少林サッカー』的なおもしろさがあったり、いろいろ泣かせてくれるところがあったり(思いっきり泣かされたかと思うと、次の瞬間、大笑いさせられたりするんです!)、決して有名な俳優が出ているわけでもないし(アイドルグループ“神話”のキム・ドンワンが主演ですが、俳優として有名なわけではありませんし)、監督のナム・サングクも第1作だし、ノリとしてはB級映画的な感じなんです。でも、私は大好きです、この映画! マジにこれ、一般公開したらなかなかヒットすると思いますよ! どこかの配給会社、買ってないのかなぁ……これは絶対お薦めです。個性的でカッコイイ、いわゆるイケメンの男の子たちが何人も出てるし、音楽もいいんですよ! ただ、一般公開する場合は、タイトルを考えないとねぇ……『回し蹴り』のままじゃ、なんだかよくわからないし、英題の『スピン・キック』も……う〜ん、しゃれたタイトルになるといいけど。星取りでは当然、★★★★。もう☆半分ぐらいあげたい気分ですが。

 その後すぐ、夜の7時から観たのは『風の伝説』。これも、パク・ソルミ演ずる女刑事が、イ・ソンジェ扮するジゴロのようなダンサー、パク・プンシクの犯罪を暴いて逮捕するために近づいていく話と聞いていたので、てっきりサスペンス物かなと思っていたら、しっかりコメディでした! ていうか、もしかして“おバカ映画”? ってノリでした。何しろ、パク・プンシクがいろいろな地方を回るダンス修行が、たっぷり笑わせてくれるんです。「バカヤロー」が口癖の、日本でダンスを習ったという、普段はヨボヨボなのに、踊り出すとシャキーンとする老師匠には、笑い打ちのめされました! 他にも、しつこいぐらい変な師匠たちが出てくるし、パク・プンシクをダンスに目覚めさせた友人のジゴロ的ダンサーにキム・スロですからね。上映後のティーチインでパク・ジョンウ監督もいってましたが、「この役が出来るのは、韓国映画界では彼しかいない」というハマリ役でした! さらに、サブキャラの女優陣が、みんな魅力的なんです! プンシクと再会して幼稚園の中庭でダンスをする奥様役のイ・カニ、老師匠の孫娘のダンサー役のハム・ボルム(実際にダンスのチャンピオンだそうです)、そして何より、プンシクを騙すジヨン役のムン・ジョンヒの見事な変身ぶりと、色っぽいダンス! 彼女、寺島しのぶにそっくりなんです! あ、木村佳乃にも似てるかな。ムン・ジョンヒ、また、好きな韓国の女優さんが出来てしまいました(出演作、結構観てるのに、今まで気がつかなかったなんて)。映画的には、ラストの香港の夜景や、いろいろ楽しい場面がいっぱいありましたし、これも音楽が素敵でした! ただ、時間が2時間13分で、ちょっと長い気がしましたね。数々の作品を書いている名脚本家パク・チョンウの初監督作品に敬意を表して、★★★☆。

 長いといえば、金曜日の夜に観た『公共の敵2』は約2時間半にもかかわらず、まったく長い感じがしませんでした。ソル・ギョングの新しい魅力も知ることが出来たし、チョン・ジュノの悪役ぶりもカッコ良かったし、さすがカン・ウソク監督、ということで、この作品は、★★★★。

 結局、福岡アジア映画祭2005では、3本の韓国映画を観ましたが、どれもみな良かったですねぇ。さすがキャリアのある映画祭(今年で19回目)、上映されるのはいい映画ばかりです。となると、『最後のオオカミ』を観逃したことが余計悔やまれます。韓流シネマフェスと違って、すぐDVDが出るわけじゃないですからね。

 ところで、先週末は、日曜日がまたまた学院の体験入学で、ゲストはクラリスやナウシカの声優の島本須美さんでした。で、島本さんとは結構古くからの知り合いだったにもかかわらず(私の長男と同い年の娘さんがいるんです)、私は全然知らなかったんですが、島本さんの御主人て、コントグループの元ちびっこギャングの越川大介さんだったんですね。今は、劇団D.K.HOLLYWOODを主宰してます。確かに、島本さんも越川さんも、青年座研究所出身ですからね。いつか島本さんにも舞台に出て欲しいなぁ。

 というわけで、先週は、のんびり、というか、遊べたのは土曜日だけで(DVDは平日に2本観ました)、その日に集中して、3本の韓国映画と、1本の演劇を観たわけです。

 で、その演劇『東京物語』ですが、脚本は、あぁ懐かしや竹内銃一郎さん! 最近、というか、ここ10年以上、全然お会いしてないですね。昔は螳螂観に来てくれたり、秘法観に行ったりしてました。確か、『銀幕迷宮』の本多劇場公演の時、パンフ用に対談もしてくれましたっけ。映画の話や、川島雄三監督の話をしました。最近の芝居、観に行ってないのがいけないんですね。

 それはさておき、飛ぶ劇場の泊氏演出、ギンギラ太陽’sの大塚ムネト氏とあんみつ姫のとまとママ主演のこの作品、期待に胸躍って伺わせてもらったわけですが、とにかく、初めてということで驚いたのが、とまとママの素晴らしさでした! 他には、いくつか不満なところもあるんですが(後述します)、彼女(?)について、私は詳しく存じ上げてないんでアレなんですが(ギンギラの嘉穂劇場公演で拝見したぐらいですかね)、福岡ではもちろん有名なんでしょうが、もう全国レベル的に活躍出来る方ですね! いえ、もう活躍してたらごめんなさいですが。御存知のように、私はニューハーフのルポルタージュ(なんか久しぶりに宣伝するみたいですが、『ニューハーフが決めた「私」らしい生き方』というタイトルで2000年にKKロングセラーズから出版してます。まだ絶版ではありませんので、よろしく!)を書き、その時にショーパブも随分取材し、いろんなオカマキャラや美しいニューハーフたちに接して来ましたが、同じプロフッショナルな世界でも、ショーパブレベルではなく、マスコミレベルで生きていけると感じた人は、あまりいませんでした。つまり、大切なのは自分、というナルシスティックな部分で、作ったり見せたりしている人たちが多いと感じたんです。さらにいえば、具体的な表現力の問題なんだと思いますが、今回のとまとママの演技を観て、泊氏が演出的に引き出したり、大塚氏の刺激によって引き出されたりした部分もあるのかもしれませんが、それにしても、かなりクオリティの高い表現力を持っている人だと感じましたね、とまとママは! テンポや勢いだけでなく(それがまず、いいんですけどね)、それを引き受けて余りある表現になっていたと思います。特に、男になって、べらんねぇ口調でいうシーンはたっぷり惹きつけられましたね! そうそう、とまとママ主演で寺山さんの『毛皮のマリー』やったらいいのに、なんて思っちゃいました! 私も20年近く前、今は無き渋谷のジァンジァンでやりました。あ、もちろん演出ですよ。

 その相手役の大塚氏は、いつものカブリモノのノリとは明らかに違うノリ、というか深い演技で魅せてくれました。何しろ革命家の役ですから。いろいろなものを背負って生きている人間の役ですからね。その辺りが、いつもの楽しいノリがなくて物足りないという人もいるかもしれなぁ、とも思いましたが、押さえた情熱が必要な役ですからね。楽しいノリなんかいらないんです。最後には、それがちゃんと高まって来てましたしね。う〜ん、最後の方の二人の緊張感溢れるシーン、良かったですねぇ。だからこそ、二人には、客へのくすぐりや前説なんかやって欲しくなかったんですけどね。それは、あんみつ姫やギンギラの公演でいつもやってることでしょうから。

 というわけで、オリーブ役のとまとママも、ブレーキ役の大塚氏も良かったとすると、最初に書いたように何が不満なのか……それはやはり、演出的なことなんですよ。オリーブが小津安の映画『東京物語』のことを語っていくシーンやその他で、アンサンブルの若手役者たち(二人と明らかに力量の差を感じたのも、ちょっと問題だと思います)が、映画のワンシーンになったりして登場するんですが、私は、あれで緊張感をそがれて、芝居に集中出来なくなってしまったんです。まぁ、広いイムズホールということもあるので、演出的にいろいろ考えたんだろうなということもわかるんですが、私個人としては、この作品は、最後の二人の緊張感溢れるシーンにつながるように、二人ががっぷり組んで、丁々発止のやりとりで展開する緻密な芝居(もちろん、笑える部分もあっていいんですよ)として観せて欲しかったというのが、正直な感想です。そうそう、天野天街演出の『真夜中の弥次さん喜多さん』のような、って、あれとはまた違う感じでね(とまとママと大塚氏だから当然違ってくると思いますが)。しかし、福岡では、そういうのって受け入れられないんでしょうかねぇ……まぁ、ああいう作り方で楽しんだお客さんが多ければ、それに越したことはないと思いますけど、あくまでも私的には、好きな作品だからこそ、なんか演出的にヌルイ感じがしてしまいましたね。音楽も美術も衣装も?でした。てことは、やはりトータル的に演出の問題なんでしょうね。泊氏の演出、『Red Room Redio』観逃しちゃったからなぁ。『冒険王』も。今度の『IRON』は期待してますよぉ!

 わぁ、徒然なるままに書いてたら、またまた長くなってすんません! なお、今週末は、土曜日はまたまた体験入学で、日・月の連休は鹿児島に行って来ます(初!)ので、火曜日の更新に間に合わんかもしれません。て、いつもやんけ! すんません、最近、週明けの月曜日にやることが多くて……トホホ。

(2005.7.13)
(つづく)


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