先週は、ずっと観たかった映画を観ることが出来ました。まぁ、例によって韓国映画ですけどね。ホン・サンスと並んで(まったく作風は違うんですが)大好きな監督の一人、キム・ギドクの『悪い男』と、もういうまでもなく大好きな女優チョン・ジヒョンの新作『4人の食卓』です。
ああ、あとDVDで、ようやく『アフリカ』(といってもアフリカ大陸とは何の関係もありませんが)も観ることが出来ました。これは字幕がなかったんですが、なかなか痛快で楽しかったし、ふとしたことから拳銃を手にしてしまう主役の4人の女の子たちが生き生きとしていて、日本で公開しても結構人気になるんじゃないかなと思うんですけどね。おもしろいけど、それほど中身があるとは思えない『花嫁はギャングスター』が公開されるぐらいですから(どのくらい客が入ったのかは知りませんが)。
『悪い男』は、ほんとにようやく観れたぁという感じで、まぁ、福岡での公開は東京の後ということもあったんですが、製作された3年前から観たい観たいと思っていた作品ですからね。当然、今のところ、今年公開された映画のベストワンです! というより、キム・ギドクワールドは、もう、私にとっては特別なんですよ! 製作年度順にいうと、『青い門』、『魚と寝る女』、『実際状況』、『受取人不明』、そして『悪い男』と、全10作のうち5本しか観てないんですが、すべて好きな作品ばかりです。何がいいのかって、もちろん観た人にしかわからないんですが、あの「痛さ」ですね。まさに「痛い」映画なんです、キム・ギドクワールドは。釣り針を何本も飲み込んで自殺しようとしたり(『魚と寝る女』)、大きな鋭いガラスで刺されたり(『悪い男』)といった視覚的な痛さ、そして聴覚的にも突き刺さってくる音楽や効果音、そして何より、登場人物たちの心の痛さを感じることが出来、観ているこっちまで心が痛くなってくるんです。昔、大好きだったリリィの歌に『心が痛い』という名曲がありましたが(知ってる人は40代以上?)、まさにあの歌詞のような映画ですね。それは、泣かせるとか感動させるとかそういった手法ではなく、ただひたすら登場人物たちの心をストレートに感じさせるというやり方で、台詞が少ないのもキム・ギドクワールドの特徴ですね。台詞が少ないから、余計画面にのめり込み、登場人物の心情がストレートに伝わってくるんですね。そして、もうひとつの特徴、それは、決してリアルな世界のまま終わらない、ということです。え、なんなのこれは、という世界が、それまでのリアルな世界から普通に続いて出て来るわけです。これこそがまさにキム・ギドクワールドなんですが、当然、いつまでも終わらないで欲しいと思う世界(私が好きな作品は映画も芝居もみんなそう)です。
キム・ギドクフリークの私は、『受取人不明』が上映された2001年の東京フィルメックスの時には、楽屋まで押しかけてキム・ギドクにサインをもらったりしちゃいましたからね。当時はまだ韓国語もほとんど話せず、話が出来なかったのが残念ですが。まだ観ていない新作の『海岸線』と『春夏秋冬…そして春』は今年一般公開されるようですし、最新作の『サマリア』は三月に韓国に行った時、ちょうど公開が終わったばかりで観れなかったんですが、出たばかりのDVDを先日通販で買ったので、もうすぐ届くと思います。楽しみ楽しみ! 『シルミド』や『ブラザーフッド』といった大作なんかより(いや、もちろんいい映画ではあるんですけど)、『冬のソナタ』なんかより(いや、私もはまりましたが)、私は断然、『悪い男』が好きですねぇ! もちろん、主役の二人(チョ・ジェヒョンとソ・ウォン)が主演男女優賞です! って何のためなのかよくわかりませんが。そういえば、キム・ギドクは韓国の北野武といわれているそうですが、私は北野武の映画も大好きですが、全然違うと思いますね。
韓国映画に関しては、もうすぐ出来るであろう別のコーナーでじっくり書けばいいんですが、今回はあまりに『悪い男』がよかったので、長々と書いてしまいました。すみません。でも、ぜひ観て下さい! DVDも8月に発売されるようです。
で、もう一本の『4人の食卓』ですが、これはねぇ、う〜ん、好きは好きなんですが、『悪い男』ならぬ、後味の“悪い映画”ですねぇ。嫌な映画です。観終って外に出て来て、吐き気がしたし(といっても、別に気持ち悪い描写があるっていうんじゃないんですよ)、頭の片隅に何かがず〜っと引っ掛かってる感じが、しばらく続いてました。なんなんでしょうね、これは……といっても、別にダメな映画だとは思いません。よく出来てるし、なかなか深いものがある映画なんですが、キム・ギドクワールドが「痛い」映画なら、これは「苦しい」映画でした。ホラー映画ですしね。なんでも、いないはずの人間が画面に映っていたり(私も確かに見えました)、それを発見した人が体調を崩して入院したり、チョン・ジヒョンもこの映画の撮影中は気分が悪かったといってますし、何より謎が多い映画で、しかもチョン・ジヒョンが××××××してしまうなんて(ネタバレなので伏字にしました)、ショックでしたからねぇ。ああ、嫌な映画でした。でも、家に帰って来て、また韓国版のビデオで観てしまいました。きっとDVDも買って、また観るでしょうね。
さて、土曜日には、学院のクラブ活動“シネマサークルYAGF”の撮影会で久しぶりにベイサイドプレイス博多埠頭に行ってきました。このクラブ活動は、学院内でプロジェクターを使って映画を上映してみんなに観せたり、学院のイベントを記録として残すためにビデオで撮影したりする他に、自分たちで映画も作ろうということで今年から始まったもので、中心になるのは1、2年生の生徒たちなんですが、一応、私が責任者として、クラブ員たちに映画の撮り方について教えたりしてます。それを実践的にやろうということで、水曜日の放課後、ビデオカメラ(まだ本格的なものではなく、家庭用のビデオですが)の撮り方を教え、土曜日に希望者15人で撮影会に行ったわけです。ベイサイドプレイス博多埠頭の博多ポートタワー前に集合し、その周辺で各自撮りたい場所や、何をどういう風に撮るかをロケハンし、その後、順番に撮影を始めました。ショートストーリーを考えて撮る者やドキュメンタリー風に撮る者、何を撮っているのかわからない者など、各自、決められた3分以内の映像を自由に撮りました。声優科の学生たちは、事前にあった「映像モンタージュ」や「シナリオ基礎」の授業で教えた(みんな私の担当でした)ことを生かして、ちゃんとカット割やカメラアングルを考える者もいて、なかなか将来有望だなぁと思いました。といっても、映画監督を目指す者はいないと思いますが。
撮影したビデオは編集し、みんなで批評し合い、秋の学院祭で発表する劇映画に向けて、夏に本格的に撮影をしていくことに生かしていきたいと思っています。まぁ、作品の出来はともかく、みんなスタッフワークも含めて、実際に外で撮影したりする時はこんな感じなんだということを、生で体験してもらえただけでもよかったと思います。自分が撮った映像がプロジェクターで大きなスクリーンに映し出された時には、また違う喜びを感じるとも思いますが。しかし、私も自主映画を撮っていた中学や高校時代を思い出して、なんか懐かしかったです。あ、3年前に撮ったブロードバンドムービーも、予算もなくて同じような感じでしたけどね。いつまでかわかりませんが、福岡にいる間に、福岡を舞台にした映画(ビデオでいいんですが)を撮っておきたいですねぇ。う〜ん、どんな映画がいいかなぁ。
(2004.6.15)