2003年1月第5週

 さて、先週は久しぶりにいろんなことがありました。まぁ、1月後半から予定が立て込むと予測していた通りになったのですが、先週、いや、厳密には先々週の土曜日の夜、オキナワ月光舎の“見えない芝居”の公演を観に行くために、まず福岡に行きました。

 オキナワ月光舎に関しては、以前にも説明したかもしれませんが、昔、演劇舎螳螂にいた長谷川淳一が、その後、代々木アニメーション学院の声優科の先生になり、めぐりめぐって沖縄校に行き(そのおかげで私も特別講師として沖縄に何回も呼ばれることが出来たのですが)、沖縄校声優科の最後の卒業生たちを中心に作った劇団で、私の作品だけを上演していきたいという長谷川の希望で、月光舎という名前を使って、いわばのれん分けのような形で出来たものです。そして、沖縄校が閉鎖された後、長谷川は福岡に転勤し、現在、沖縄に残って活動しているメンバーと、代々木アニメーション学院福岡校のOBと現役の生徒たちで運営されるようになったのです。

 “見えない芝居”というのは、オキナワ月光舎のレパートリーのひとつ、というより、今や核になっている公演形態で、視覚障害者のために、音や匂い、実際の風などを使って上演するもので、詳しくはオキナワ月光舎のホームページを見てもらいたいと思うんですけど、現在、大幅な変更があり、まだそういった紹介のコーナーが出来てないんです。でも、その時の新聞記事が載っていて、それに少し書いてあるようなので見て下さい。これまで沖縄の盲学校などで上演されてきて、昨年の12月には沖縄県視覚障害者福祉協会のホールで上演され、今回、学院祭に合わせて福岡でも上演されることになったので、私も観に行けることになったわけです。

 作品は、オキナワ月光舎のために私が書いた『風の街・ルーン』というもので、螳螂の最終公演だった『螳螂版・森は生きている(改題:グレシアの森に)』の続編で、私も音や風や匂いを意識して書いたものを、長谷川がさらに“見えない芝居”風に脚色し、演出しました。

 私も“見えない芝居”は生で観る、というか、健常者は目隠しをされるので、聴くことになるのですが、とにかく初めての体験で、本番までの段取りも悪く、どうなるのかと心配してましたが、結果的には、なかなか感動してしまいました。NHKはじめテレビ局の取材も多く来ていて、みんな感心してました。もちろん、まだまだ拙い部分はあるのですが、それは“見えない芝居”が本物になっていくための過程であり、試練だと思いますし、逆にいろいろな可能性を感じたことで、月光舎でもやってみようかなとさえ思いました。普段見えているものが見えないと、いろんなものを感じようとする力が働いて、観客として想像力も豊かになるし、長谷川が上演前の説明でいっていた「目を開けると(目隠しをはずすと)、逆に見えなくなります」という言葉が、この“見えない芝居”の本質を表しているようで、素敵だなと思いましたね。月光舎が、『啼く月に思ふ』の韓国凱旋公演を上演した際、「日本語版よりハングル版の方が、言葉がわからなかったけど、その分、想像力を刺激されておもしろかった」と何人もの客にいわれたことと同じような気がして、演劇表現のさらなる可能性を感じましたね。

 オキナワ月光舎の“見えない芝居”のことだけでいっぱいになってしまいましたが、この公演は、もうひとつ、沖縄と福岡の演劇人(といえるかどうかわかりませんが)の交流ということでも、とても意義があったと思いました。終わって飲みに行っても、沖縄の人たちは初めて食べるものばかりだというし、福岡のメンバーが沖縄に行った時はその逆だったというし、そこにぜひ神奈川の月光舎も入って、交流をさらに広げたいと思いました。もちろん、さらにアジアへと、ね。

 え〜、「いろんなこと」はさらに来襲! 福岡の翌日には広島にGO! そして、先週の土曜日には、観て来ましたよぉ、ホビロン大王も出てる『青ひげ公の城』! 9日までだから、来週には終わってるなぁ。まぁ、感想はいろいろと……

(2003.2.3)
(つづく)


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