ナイタイ主催の2002ミスシンデレラコンテストで見事グランプリに輝いた、大阪ジュエリーニューハーフ所属の不二子さん主演のビデオ『魔性の女/プレイボーイ不二子』(元は男なのでプレイボーイなんです)の撮影は、19日の日曜日、青山にあるマンションスタジオで行われました。マンションスタジオというのは、普通に暮らしているようなマンションの一室が撮影しやすいような環境になっていて、よくAVの撮影なんかに使われるそうです。AVに詳しい人なら「あ、また同じところだ」なんて思うんじゃないでしょうか。しかし、三部屋それぞれ雰囲気が違っていて、ベッドだってシーツとカバーを変えれば、違う家だという設定で撮影出来ちゃうんだから便利ですよね。何カ所も回らなくていいんだから。
で、私が取材ということでそこを訪ねた時は、すでにスチール撮りが終わっている段階でした。スチール撮りというのはビデオのパッケージや宣材用のスチール写真を撮影することで、これが結構重要で、以前取材したんですが、これで本編撮影前の女優さんの気持ちをリラックスさせていくんですよ。だから、カメラマンの人はなかなか饒舌で、いろいろ笑わせてくれます。
その後、不二子さんがマッサージを受けるシーンの撮影があって、ちょっと休憩した後、いきなり最初の絡みのシーンの撮影開始。私の出番は……まだです。というわけで、撮影の準備をしている間に不二子さんにインタビューしたり取材の仕事をして、撮影の準備が整ったら、邪魔にならないよう、しっかり部屋の隅に陣取りました。そして、音のしないデジカメで撮影風景を激写。スチールカメラマンさんはビデオの撮影中も消音装置の付いたカメラでスチールを撮ります。ドキュメンタリー風のエッチだけのビデオだと、よくスチール撮影の音やストロボがガシャッガシャッと入ってます(別によく見てるわけじゃありません)が、今回はドラマ性のある作品なので、カメラの音が入るとまずいということなんです。
不二子さんとバーのオーナーの台詞のあるシーンのカット割りの撮影を終え、監督が「それじゃ15分でお願いします」といって、いよいよ絡みのシーンの長回し撮影が始まります。指示された時間で行為を終えるというのも、ベテランの男優さんならではの技なんでしょうね。アナウンサーが時間通りにニュースを語り終えるのと一緒で。
しかし、こういったシーンをまるっきり第三者として(一応、取材ですけど)後ろの方から見ているといつも思うんですが、一生懸命やっている役者さんやスタッフたちにはほんとに悪いんですが、なんか滑稽ですよね。いや、真剣であればあるほどおかしいっていうか、息を殺して見守っているうち、その状況がどうしようもなくおかしくて、笑えてきてしまって、それを耐えるのがつらかったです。すみません、不謹慎で。でも、人のやってるのを静かに生で見てるのって、興奮することを目的としてなければ、かなり変な状況ですよ。歯の浮くような台詞もあったりして。やっぱ、ラブシーンは、画面を通して見るか、プライベートでやるに限りますね。プライベートも客観的に見ると、かなりおかしいことやってるんだろうなぁ。
さて、その後もいくつかの絡みを撮ってマンションスタジオでの撮影を終え、麻布十番にあるスナックでの撮影に移動。ということは、やはり、私の絡みの撮影は……なし。ホッとすると共に、なんか残念な気持ちも無きにしも非ず。でも、やっぱ嫌ですよ、もう。腹も出てきちゃってるし、人様に見せられるような身体ではありません。テクニックは別として。ウソウソ。実は昔、まだAVが出始めの頃、若かりし20代の初め頃には、知り合いに頼まれてやったことがあるんですよ、絡み。本番やっていいといわれてたんですが、やはり周りで人に見られてるとねぇ、出来ませんよ。疑似で済ませました。やはり昔、SM雑誌の体験SMのコーナーで、山田詠美も働いていたことのある中野の有名なSMクラブでプレイを撮影されたこともあります。知り合いの編集者に頼まれて。当時はそんな連中ばっかりでしたね、周りは。自販機本の編集者とか。今じゃ、みんないいおじさんになってますが。
結局、私の役は不二子さんが働いているバーの客で食品会社の社長。でも、最初のシーンで、不二子さんがなぜその店で働いているのかをわからせる重要(?)な役で台詞も多く、スナックに行って私はスーツに着替えて出番を待ってました。しかし、時間がかなり押して、私も帰宅するには最終電車が近づいている時間になってしまい、撮影が長引くと帰れなくなってしまいます。万事休す。当然、しっかり台詞を入れていた私は、一発撮りでOKでした。まぁ、一回でOKで電車の時間も何とか間に合ったんですが、実は、自分の演技には満足してないんです。食品会社を「しょくしんがいしゃ」といってしまったような気もするし……江戸っ子なもんで。こういうのって本物の役者さんはどう思うのかなぁ。監督がいいっていってるんだから、いいんでしょうかねぇ。
てなわけで、急遽出演のビデオ撮影の長い一日は、最終電車に間に合う時間に終わりました。このビデオは3月に発売されるそうですが、別に観なくてもいいです。
(2003.1.26)