2002年10月第2週

 韓国現代戯曲ドラマリーディング、無事終わりましたぁ。御来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました!

 私の演出した『無駄骨』は出演者も4人だけだし、連休の谷間の13時からという回で、知り合いから“行けないメール”も多く、入りも薄いんだろうなぁと悲観視していたのですが、おかげさまでそこそこの入りになって安心しました。FSTAGEのじんぼさんもホビロン大王も来てくれました。カムサハムニダ! しかし、『無駄骨』は楽日の3日目だったので、初日、2日目と他の公演を観ていても何となく落ち着かず(稽古も出来ないので)、変な緊張感もあり、自分の公演とアフタートークが終わったら、かなりホッとした感じで虚脱感が大きかったです。こういう経験は珍しかったですね。

 珍しかったといえば、リーディングの演出も初めてだし、新劇系の人たちとやるのも初めてだったので、初体験尽くしでした。それに、私の演出作品で音楽を一切使わなかったのもおそらく初めてでしょうね。

 この、リーディングの演出に関しては、5作品それぞれ演出家が好きに演出していいんですが、意図としては、韓国の現代戯曲を紹介し、そのおもしろさを知ってもらうことが第一の目的ということで、動きや音楽は使わない方向でお願いします、というお達しが最初にあったんですが、他の演出の人たちはいろいろ動かしたり、音楽やSEも使ってましたねぇ。まぁ、私も台本の指定通りの音楽ぐらいなら使おうかと思ったこともあったんですが、今回はあくまでもリーディングということで、あえて「音楽」「SE」「動き」などを封印した中で、何が一番大切かというところから浮かび上がってきた「台詞」や「言葉」というものを普通以上に重視することにしました。

 台詞のテンポや間や強弱、感情の込め方や台詞を立てる部分も細かく演出し、音楽や動きも、言葉から想像してもらうような形でね。だから、役者が座りっぱなしで演出なんかしてないように見えた人もいたかもしれませんが、実はかなり、かなり細かい演出をしてたんですよ、ハハハハ。けれんを見せることが演出のすべてじゃありませんしね。そんなのばっかりで中身が薄っぺらな芝居も多いですし。

 動きや音楽を入れていた他の演出を観ると、台本はみんな持ったままなので、作品によってはどうしても中途半端な感じがして、想像力を喚起してくれるはずの言葉に集中出来ないという感じを私は受けました。ただ単に台詞が流れているという感じがしたのもありましたしね。特に、実際に動きで表現出来ない部分を想像させる「ト書き」の部分は、どうもただの読み合わせの時のト書きのような感じで、その役者がそこで語る必要があるのかどうかと思うのもありました。自分の動きはその役者、つまり自分自身が語るというのもあって、試みとしてはおもしろいと思ったのもありましたが。

 私の場合、「ト書き」ではなく、「声」という役名にして、その情景を、舞台である監獄の中の監視カメラのように客観的に観て観客に伝えるという役回りを与えたんですけどね。南谷朝子さんがよくやってくれたと思います。とはいえ、やはり舞台上に役者はいるわけで、座ったままの役者を観ているだけだと、いくら台詞に集中していても飽きちゃうという声もあったので、動かないにしても、場面ごとに役者の場所を変えるとか、真っ暗にして何かの映像を映すとか、まだまだいろいろ工夫が出来そうなドラマリーディングではあると思いますね。でも、集中して聞いてくれた人には、このスタイルもよかったといわれましたけどね。そうそう、じんぼさんにも文語体ということで指摘されたんですが、翻訳の台詞の言葉に関しては、なかなか難しい問題ですね。どれだけ脚色出来るかということと、リアリティのある、いわゆるイマドキの言葉を使うことが果たしていいことなのかどうかも含めて。

 いずれにしても、私もドラマリーディングというものの演出は初めてだったので、他の人の演出を見せてもらったことも含め、大変楽しく、勉強になりました。新劇系の人たちとの交流もね。機会があったら(再来年に2回目をやる予定だそうですが)、またやってみたいですね。今度は全然違うスタイルで。そして今回、何より現代の韓国演劇を代表する5人の作家たちと直接出会えたということが、ものすごい財産になったと思います。特に『無駄骨』の作者チャン・ジン氏に対しては、アフタートークでもしっかりミーハーさせていただきました。他のアフタートークは固いのばっかりだったので、まぁ、ひとつぐらいこういうのもあってもいいだろうと思ってチャン・ジン氏と打ち合わせをして映画の話をしようということにしたんですが、もちろん演劇のことも絡めての話だったので、終わってから石澤秀二御大にも「小松さんがこんなに詳しいとは知りませんでしたよ」とお褒め(?)の言葉をいただきました。月光舎の木谷には「ただのファンじゃん」と笑われましたが、ハハハハ。その模様は、当日観に来てくれた韓国映画同好会の会長、植田真弘氏がHPのトピックのコーナーでリポートしてくれてます。しかし、チャン・ジン氏は人気があるんですね。在日の韓国映画のファンらしい韓国人の女の子たちがサインを求めて列を作ってましたもん。

 というわけで、韓国に行った時に向こうで会う人も増えたし、10月中は地元のジュニア・ワークショップの稽古とオキナワ月光舎の12月公演のための台本をしっかり仕上げて、11月の韓国行きまでまだまだ頑張らなくっちゃ! P.E.C.T.の稽古も始まるし、来週は広島に行くかもしれないし、10月末には東京国際映画祭と協賛企画のコリアン・シネマウィークもあるぞ! あぁ、目が回る……

(10.14.2002)

(つづく)


前週
週刊FSTAGE掲示板