2002年7月第2週

 先週初め、久しぶりに青年座の舞台を観て来ました。『美しきものの伝説』。名作ですけど、人間の修羅場を見たい私としては、ひとりひとりのエピソードがあまり深く描かれてなかったんで、ちょっともの足りないって感じでしたね。もちろん、あれだけの人物たちをひとりひとり細かく描いていたらとても3時間ではすまないでしょうけど。

 時代を描いた群像劇としてはいいと思いますし、スターさんが出ていたわけでもないので登場人物に感情移入出来たし、それでも役者ひとりひとりの個性はあったし、3時間(途中休憩あり)といってもアッという間でした。サザンシアターも久しぶりだったんですけど、何より驚いたのは客席に若者が多かったってこと! 確かに青年座だから青年が多くて当たり前、でもないかな……とにかく、私は新劇の中でも青年座は好きな方で、特に昔(もう20年以上前)は知り合いがちょっといたこともあってよく行ったんですが、客は年配の人ばかりだったような記憶があるんですよ(違ってたらゴメンナサイ)。それが今回は……確かに8割ぐらいは相変わらず年配の人だけど、それに混じって10代や20代前半の茶髪や金髪の、格好も今風の男女が結構いたんでびっくり! もしかして、いろんな養成所の生徒や小劇場の若い役者たちかもしれませんが、それにしても、昔の新劇の客層を考えたら、明らかに変わってるんじゃないでしょうか。いや、今やもう小劇場とか新劇とか商業演劇とかの垣根はなくなっちゃってるんでしょうかねぇ。歌舞伎や能も、結構若い子も観に行くっていうし。昔はそれこそ、新劇の客とか、アングラの客とか、商業演劇の客とか、ミュージカルの客とか、なんか客の顔つきや風体まで決まってましたもんね。私はニュートラルだった(多少アングラ寄りではありましたが)ので、何でも観てましたけど。

 そうそう、先週、FSTAGEの読者(ネチズンっていうの?)で天井桟敷の演劇を生体験してる人って話をしましたが、アンケートがあったのすっかり忘れててゴメンナサイ。4月に見てたんですけどね。

 ……それにしても少ないなぁ。生の状況劇場もねぇ、好きだったなぁ。「甚八!」とか「李!」とか「唐っ!」とかよく掛け声をかけたもんです。役者が登場すると必ず拍手が起きたしね。小林薫はよくデベソを出してました。今はどうなんだろ? 唐組も最近行ってないし。高橋祐也もなかなかいいらしいですね。私の知り合いの女の子がファンになったとかいってました。やはり血筋でしょうか。血は水より濃いですからねぇ。

 しかし、あのアンケートおもしろいですね。まぁ、すべてじゃないにしろ、視聴率と同じで、FSTAGE読者のだいたいの演劇傾向がわかりますから。今度はぜひ、生新劇とか生歌舞伎とか生ミュージカル(特に生四季や生宝塚)とか生相撲(関係ないか)とか、それに生螳螂も調べてほしいもんです。

 ところで、先週私は、演劇とはあまり関係ない仕事でちょっと山寄りの場所に通ってまして、部屋の窓からは丹沢連峰の山々がすぐそこに見えて、自然に囲まれた中で仕事をするのっていいなぁ、とつくづく思ってしまいました。私の家の隣りも森で、朝からいろんな鳥がやって来るんでベランダからバードウォッチング出来るんですけど、やっぱり山並みが見える雄大さはまた格別ですね。よく作家が山の中に住んで、たまに打ち合わせとかで都会に出てくるだけ、なんて話を聞きますけど、私もそういう生活に憧れてます。というのも、きっと私が東京生まれの東京育ち、厳密にいうと渋谷生まれの下北(半島じゃないですよ、沢の方です)育ちで、わが青春のフロレンス(私の大好きな映画)ならぬ、わが青春の新宿だからでしょうね。

 ま、その辺りの話はいずれ、また。しかし、下北はホント変わりましたねぇ……

(7.16.2002)

(つづく)


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