2002年4月第3週

 さて、今週も韓国の話から。といっても、日本での話。

 前回ちょっと報告した、私も会員になっている日韓演劇交流センターが主催して今年の秋に行う、『韓国現代戯曲ドラマリーディング』の会議が先週行われました。上演する5本の作品は、キム・クァンリム氏の『愛を探して』、イ・ヨンテク氏の『夢見るコケシ(パボガッシ)』、パク・クニョン氏の『代代孫孫』、チョウ・ゴワンホァ氏の『狂ったキッス』、チャン・ヂン氏の『無駄骨』です。それぞれ個性的で、年代的にも違い、とてもバリエーションに富んだおもしろい5作品が選ばれたと思います。

 私は、個人的に知っているパク・クニョン氏と、映画を何本か観ていて大好きなチャン・ヂン氏の作品の演出を希望しました(作品的にはどれも興味がそそられるものばかりでしたが)。最終的には、今月末ぐらいに日韓演劇交流センターの委員会で誰が何を担当するか決定するそうですが、ちょっと寂しかったのは、演出希望の人が少なかったことです。演出家の人は、それぞれ自分の劇団や仕事としての演出のスケジュールもあるのでしょうが、私としては、韓国の演劇に対してあまり興味を持ってないんじゃないかということを感じて、寂しいと思ったんです。

 韓国というと、どうも民族的な背景のある芝居と思ってしまうんじゃないでしょうかね。日本で上演される韓国の芝居というと、どうしてもそういうのが多いのも、私は問題だと思うんです。過去の日韓の歴史的背景のある作品だったり、日本人と韓国人の恋愛問題だったり……確かに、それはそれで日本と韓国の関係を知るにはわかりやすいかもしれませんし、認識しなくてはいけない部分としては大切かもしれませんが、もっと、現代に生きている、普遍的な人間のいろいろな部分が描かれた作品を評価してもいいんじゃないかと思うんです。

 最近の韓国映画にしても、私は『シュリ』や『JSA』といった民族的な背景を踏まえたものより(あれはあれで評価しますが)、『八月のクリスマス』や『美術館の隣の動物園』の方が好きですし(今公開されている『チング』もいいですよ、男が泣ける男の映画ですけどね)、『リメンバー・ミー(同感)』や『クワイエット・ファミリー』は日本でリメイクされて、『時の香り』と『カタクリ家の幸福』になったという事実。映画はまだいいんですよ。わかってきている人もだいぶ増えてきているようだし。でも、演劇はまだまだ歴史的背景のあるものが圧倒的に多いような気がします。

 まぁ、そういったある意味での偏見を無くしていって、韓国にもただ純粋に作品としてもおもしろい演劇もあるんだということを、日本の観客にも知っていってもらいたいという思いもあって、演出を希望した部分もあるんですけどね。

 今回、韓国に行った時、昨年のアリスフェスティバルで知り合ったトンスン舞台(アリフェスでは『夢幻曲』を上演)の連中とも会い、さらに交流を深めてきました。彼らは昨年、パク・クニョン氏の代表作ともいえる『青春礼賛』を再演していて、私もそれを観たんですが、今年、大学路に自分たちの小劇場を持ちました。そこに、日本の劇団もどんどん来てほしいといっていたので、私もその掛け橋になれたないいなと思っています。もちろん、月光舎でも行く約束もしましたが。

 日韓の演劇交流も、歴史的な背景や教科書や靖国参拝問題は別として(実際、私の知っている韓国の若い演劇人たちは、そんなことは全然関係ないといっています)、もっと作品レベルの交流が盛んになればいいのにと思います。お上のやることとは別の、直接的な民間交流をね。

(4.23.2002)

(つづく)


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