FSTAGE演劇祭参加の劇団東方的威風の松本(＝ふとがみ)です。
とりあえず日程が決まりましたので、第1弾としてお知らせいたします。

　六月の午後、ビルの屋上でアサとサキが出会う。あふれる光りにさそわれて、二人の女は旅に出る。
　それは、記憶をめぐり、言葉を見とどける旅。アサがこれまで奪ったものをなぞる旅。
　いつかしら旅は夜を越え、海にたどりつき、ささやかな宴会となる。夜明け前の砂浜で、船を待ちながら続く、三十四年と三秒半の宴会。
　やがて、船が来る。船に乗っていってしまうものは何なのか？残されたものは何をすればいいのか？ 　サキは再び屋上に戻る。朝の街を眺めながら、彼女の旅は終わる。

　始まった宴会は必ず終わります。寂しいけれど、かならず終わります。人は宴会の次の日を暮らさなければならないのです。宴会の最中に、次の日のことを考えるようになった時、人は大人になるのかもしれません。
　人の生も必ず終わります。悲しいけれど、かならず終わります。私たちは常に、誰かがいなくなった世界を生きているのです。親しかった誰かがいなくなることを繰りかえしながら人は大人になるのかもしれません。
　それが、この公演のテーマです。

　子供からも大人からも生きている実感が奪われていく時代だと言われています。本当でしょうか？
　実感はあるのに、それを見つめる時間がない。時とともに、人の世とともに、個人の実感も変わっていきます。その変化を形にする努力、それを怠っているだけのようにも思えます。
　そんなことも考えながら、この作品を作っています。

　東方的威風のこれまでの公演の集大成となる舞台です。必ず何かを伝えられると確信しています。多くの方にみていただくことを願っています。

「FSTAGE演劇祭に期待すること」

　ネットの動きは早い。だけど芝居は相変わらず、ゆっくりと少しずつ一言一言にこだわって作っていくもの。ネットだからこそ、ゆっくり確実に手ごたえのあることをしっかりとこなして拡げていける。

　顔も知らない劇場も知らない、そんな仲間たちと作る演劇祭。だけどそれは想像力をかき立てる。。かもしれない。創造性をかき回す。。かもしれない。何がどんなふうにつながっていくかもわからないくらいの、そんなところからのスタートで、驚きとか、発奮とか、そんなものがあったりしても、いや、なかったりしても、きっと、どこかでつながっている。

　あの日のあの劇場の空間と、この日のこの劇場の空間は、FSTAGE演劇祭によって、時空を超えてほんのちょっだけ、針の穴よりわずかなものかもしれないけど、でも絶対につながっている。もしかするとそれは楽屋の片隅に飲み空けられた栄養ドリンクの瓶の中で、役者自身も気にとめないしたたりおちた汗の中で、あるいは観客も役者もスタッフも帰ったあとの劇場の猫走りの上で、無意識のときにしか気づけない、そんなつながりかもしれないけど。

　きっと強く欲したらそれだけで消えてしまうような、「期待」すら強すぎると思えるほどのまだ淡い新しさ。

　そんなものをFSTAGE演劇祭に「祈待」します。

RXP03542@nifty.ne.jp　ふとがみ=松本@SAPPORO