まずは、先週の続き、っていうか、書けなかった熊本行きの話から。
2月5日(日)の熊本行きは、『豚とオートバイ』の出演者である中村卓二さんと宗真樹子さんが出ている劇団きららの公演を観に行くのと、やはり出演者の、熊本の劇団0相の松岡優子さんと打ち合わせをするため。宗さんはきららの劇団員、卓二さんはP.T.STAGE DOORの劇団員で今回は客演。きららの公演を観るのは3回目だが、卓二さん出演の舞台を観ているのはギンギラ太陽’sばかりだから、かぶりもの以外の芝居は今回が初めて。といっても、卓二さんの実力はかぶりものでも当然わかるので、私の達ての願いで『豚とオートバイ』に出演してもらったのだ。宗さんもそう。『豚とオートバイ』のリーディング公演をやると決まった時、「チェ・バンドンの妻役はこの人以外にない!」と、その場で出演交渉をした! 偶然、というか、今、考えると運命かもしれないが、そこに彼女がいたのだ! その二人が出ている公演だから、当然、熊本までだろうと何だろうと、観に行く。考えてみれば、出演交渉第1号も熊本の松岡さんで、彼女とは以前から、何か一緒にやりたいねといっていて、やはりリーディング公演が決まった時、その場に、というか、目の前にいて、すぐ交渉した! 彼女の劇団0相の公演も2月8・9日にあるのだが、平日なので残念ながら観に行けない。松岡さんは、きららの公演が行われている熊本県立劇場のスタッフでもあるので、昼間は劇場にいる。夜は当然、本番直前で稽古なのだが、我々が観るきららの公演がマチネの1時からなので、その前に会えるというわけだ。
熊本行きのメンバーは、『豚とオートバイ』制作の薙野さんに出演者のハンキンさん、それに、以前、清和文楽邑や片岡演劇道場にも一緒に行った石田輝子さんと、私の4人。ハンキンさんが車を出してくれるということで、9時に竹下近くのウチに迎えに来てもらい、井尻の石田さんのところに寄って、小郡で薙野さんを拾って熊本へ、というコース。ところが、前日の誕生日会の酔いが残っていて、目が覚めたのが9時10分前。あわてて用意を始めたら、すぐハンキンさんから電話があり、近くで待っててもらうことに。結局、ウチを出たのは9時15分過ぎ。でもまぁ、天気も良くて、道も空いていて、車は快調に進み、途中パーキングエリアに寄ったりしながら、12時前には熊本県立劇場に到着。松岡さんと会い、近くのパスタ屋でスパゲティの昼飯を食べながら稽古スケジュールの打ち合わせ。劇場に戻り、ロビーで、熊本出身で、卒業後きららに入りたいということで公演を観に来た代アニの学生と落ち合い、みんなで、すでに開場していた劇場内へ。
今回、公演が行われる熊本県立劇場の演劇ホールというのは、1200人近いキャパの立派な劇場で、去年3月に行われた日本劇作家大会2005では、メイン会場になったところ。といっても、私は行けなかったけど。今回は、その舞台の部分だけを使っているので、横の通路から楽屋口に通じる道を通り、袖を通って舞台の上に行くと、従来の舞台奥の方に、従来の客席の方に向かって客席が作られている。つまり、緞帳の方が舞台奥になるという作り。それでも結構広い。まぁ、間口はそのままだし、タッパ(高さ)もあるし。
今回のきららの公演『野性の沸点』は、5年前にやった作品の再演ということだが、これまで私が観たきららの公演の中では、一番良かった! 「俺はアフリカで死ぬ!」と叫び、ナイフとスプレーを手に街を徘徊する若者と、彼を更正させると宣言してマスコミに登場する弁護士。彼をモデルにして漫画を描く漫画家。さらに、彼らを取り巻く人々によって、現代社会のひずみの部分に隠された人々の悲痛な叫びが描かれていく―――簡単にいえば、こんな感じのストーリーの脚本だが、今風の若者やマスコミに踊られされている人々の姿も描かれていて、なかなかおもしろかった。今、流行りの映像とのコラボレーションも使われているなど、舞台も緊張感のある使い方がされていた。きららは、よく日常で使われている道具を、いろいろな装置に見立てて使うのだが、今回は、スチール製の洋服を何着も吊るハンガーが、壁やドアや抽象的な装置として効果的に使われていた。SS(サイドスポットライト)が、そのハンガーに当たり、鈍い光を放っているのも良かったし、床を移動させる時のガーガーという音も、主人公の心象音とでもいうかのように効果的に響いてきた。役者たちも、それぞれの個性的なキャラクターが、舞台全体の印象とマッチしていて、多少オーバー気味の演技も、不自然さは感じなかった。何より、弁護士役の卓二さんの初めて観たかぶりもの以外の演技には、圧倒させられた。宗さんの七変化ぶりも、一層磨きがかかっていた。いやぁ、こんなすごい人たちとリーディング公演が出来るなんて、とあらためて、うれしく思った。この公演は6月に福岡で行われるということだが、ぜひ東京でもやってほしい。東京でも充分、評価されると思う。気になったのは、ちょっと長い気がしたので、後半のエピソードをもう少し整理して、15分ぐらい短くしたらグッと良くなるだろう。前半の疾走感は素晴らしかった。
公演終了後、みんなで楽屋にお邪魔する。きららの主宰の池田美樹さんに代アニの学生を紹介し、卓二さんや宗さんとも簡単に稽古スケジュールの打ち合わせをして、楽屋を出る。その後、みんなでちょっとお茶(といっても、私はビールだったが)をした後、今回の熊本リージョナルシアターというイベントのひとつで、ロビーでやっていたリーディングや劇団「風」の宝塚風・抜粋版『ハムレット』を観て、5時前に熊本県立劇場を出発。途中、ごく普通のスーパーマーケットで、熊本名物、というより、熊本の人たちは当たり前に食べている“太平燕[たいぴーえん]”を買い、一路、福岡へ。行きの逆で、小郡で薙野さん、井尻で石田さんを降ろし、私も家の前まで送ってもらう。その夜、熊本でもらった、やはり熊本名物で大好きな“からし蓮根”と太平燕と芋焼酎で一杯! う〜ん、熊本もいいとこだ! もちろん、食べ物のことだけじゃない。
いやいや、熊本行きの話は簡単に済ませて、どんどん先週の話を、と思っていたのに、結構長くなってしまった。といっても、先週の夜は、ほとんど『豚とオートバイ』の稽古。卓二さんや宗さんも参加してくれるようになって、実に充実した稽古になっている。いや、当たり前なんだけど。松岡さんも13日の月曜日から参加。その模様は、例によって、制作日誌のブログでどうぞ! 稽古場の写真入りで紹介されている。
しかし、卓二さんの男役は、これまで観てきた彼の舞台と違って、かなり抑えた演技と、そこから出て来る熱さを要求しているんだけど(何しろ韓国の芝居ですから)、それに見事に応えてくれていて、さすがという感じだ! 彼のまた別の一面をこの舞台で観せられると思うので、ぜひ、御覧いただきたい! いい役者だぁ! 宗さんのチェ・バンドンの妻もすごい! チェ・バンドンの妻は、原文の台詞が、韓国の全羅南道木浦[チョンラナムドモッポ]地方の古い方言で書かれていて、韓国で上演された時も何をいっているのかわからなかったという人が多かったらしい。で、今回も、しっかり方言で語ってもらっている。九州の人には、ちょっとはわかるらしいけど、私にはまったくわからない。といっても、演出だから、ほんとはわかってるんだけど。
とにかく、二人が稽古に入ってくれて、あらためて、すごいメンバーが揃っている舞台だということを実感! 出演者全員が個性的で、しかもいい! いや、自画自賛したくなるのも当たり前だと思うメンバー! 来週一週間、私は名古屋、横浜、大宮、東京と出張で福岡にいないので、今週が稽古の大詰め! 他の人たちもかなりテンションが上がってきて、すごい舞台になりそうだ! 九州の人しか観れないけど(いや、他のところから観に来てくれるのは大歓迎だけど)、お楽しみに! ……これもなぁ、東京でもやれたらいいんだけど。
ところで、風邪ではないけど、ここ4、5日、ちょっと体調を崩していて、というか、咳がひどくて、昨日、病院に行ったら、「軽い気管支炎です」といわれてしまった。この“軽い気管支炎”というのが、どれだけのものなのかわからないけど(まぁ、症状が軽いというのはわかるけど)、病気で“軽い”っていうのは、どうなんだろ? 気分的には、“軽い”といわれると、なんか安心だけど、「軽い癌です」とか「軽く死んでます」とかいわれても、うれしかない。いや、そんなのはないか。とにかく、早く治さなくては!
そうそう、先週、写真で紹介した宮崎みやげの“なんじゃこりゃ大福”は、正確には、「なんじゃこら大福」だった! 松田優作じゃなかった! 店からクール宅急便で取り寄せが出来るそうなので、甘いものが好きな方は、ぜひ、御賞味下さいな! 別に店の回し者じゃないけど。私もまた食べたいので、注文する!
(2006.2.15)