2004年3月第1週

 先週の金曜日に学院の一年間の授業が終了しました。これで二年生は卒業(15日に卒業式があります)、一年生は4月から二年生になるわけです。私の常勤の講師生活も、とりあえず一年間、無事終わったわけで、ちょっとホッとしています。何しろ、これまでのような、ひとつの公演をするための稽古期間や、公演がない時に行うワークショップの期間とはまったく違って、ほぼ毎日、稽古をしていたようなもんですからね。それも夜の稽古ではなく、朝から夕方まで。まぁ、サラリーマン演出家ですね。でも、楽しかったですよ。何より、学生たちが日々成長していく姿を見るのが一番うれしかったですね。この成長の度合いやスピードは、当然、人によって違うので、短い期間だとわかりません。やはり、一年という期間を通して見ることが出来たということが良かったし、それが一年生の場合には、二年次の課題へとつながっていくわけです。

 これまでの一年制から、今年から二年制になったわけで、私も一年制の時に特別講師として何回か授業に入ったりしていましたが、やはり責任を持って指導していき、成長を見届けるなら、最低二年間は必要ですね。ほんとは三年ぐらいがいいかと思いますが。今年、私と一緒に入った一年生はまだ二年次があるんでいいんですが、二年生に関しては、ある程度、形が出来ている学生が多かったので、さらにそこからどうしていけばいいかということが、ようやくわかって伝えられるようになってきた頃に卒業ということになって、ちょっと残念です。表現という世界のおもしろさ、楽しさ、奥深さ、厳しさをどこまで伝えることが出来たか……意識だけでも変わってくれていればいいんですけどね。

 しかし、ひとつの舞台であれば、方向性が決まっていて意志統一は出来るので、アンサンブルによっていい舞台を作っていくことは出来るんですが、学院の授業だと、人のことはお構いなく自分だけ頑張ればいいという自分勝手な学生が結構多くて、困りますね。いや、別に私が困るというより、その子のためにも良くないと思いますよ。演技というのは一人だけじゃ出来ない、人と出会う(きちんと絡む)ことで膨らみ、成長するんだということをいくらいってもマイペースの演技で、しかも他の人にいった「ダメ」を聞いてないものだから、同じようなことを訊いてきたりするし、「さっきいっただろ!」という言葉を何回いったことか。決して演技が下手というわけじゃないんですけどね。でも、そういう子はそれ以上成長しません。自分にあったキャラクターの演技しか出来ないわけです。一方、初めは地味でどうなることかと思った子でも、いわれたことを素直に受け入れて、努力して変わってきた子が何人もいます。そういった子はどんどん変わるので、一年後には確実に逆転していますね。とにかく素直が一番、初めは真っ白がいいわけです。まぁ、ウサギとカメの世界でもありますからね。

 一年の授業を振り返りましたが、卒業する学生にしろ、二年に進級する一年生にしろ、当然、これで終わりじゃないんで、次のステップで頑張ってほしいと思います。どんどん変わっていってほしいなぁ。

 さて、土日の福岡は、晴れていたかと思うと、突然、雪が降ってきたり、ヘンな天気でした。風も強かったですね。バイクで走っていたら、強風にあおられて前の車にぶつかって事故ったという学生からの報告も受けました。前にも書いたと思いますが、風で電車が止まるぐらいの土地ですからね、福岡は。しかし、これでほんとに暖かくなるんじゃないかな。いやぁ、風が強い寒さは嫌いです。雪とかの寒さはいいんですけど。

 ところで、見えない芝居『KAZAOKI』の福岡公演は、残念ながら中止になりました。オキナワ月光舎の主宰で、演出もしている長谷川が、卒業式に向けての準備(卒業制作のアニメ作品のアテレコ等の作業)で、稽古をしている時間がなく、いいものを見せることが出来ないという判断からですが、確かに沖縄公演もギリギリの状態でしたからね。まぁ、これからはスケジュール管理をしっかりして、余裕を持って公演出来るようにしていってほしいと思いますが……無理かな。

 長谷川は、これからは「見えない研究所」というのを作って(いえ、別に透明の研究所というわけじゃないですが)、まずはスタッフの意識を高めていきたいということなので、いずれまた、グレードアップした“見えない芝居”を見せてもらうことが出来ると思いますよ。それまで楽しみにお待ち下さい。

 私も4月から、週一ぐらいでワークショップを始めようと思っています。まぁ、一種の勉強会のような形で、別に組織にする気は毛頭ありません。とりあえずは自由参加にしようと思いますが、課題を出していって、それをこなせない人間は落としていくと。一年間やってきて思ったことなんですが、教えるという立場にいる以上(それが仕事ですから)、レベルの高い子を育てたいですしね。まぁ、しっかりやるからには、出来ない子の救済をするようなものにしようとは思いません。それはちゃんと学院の授業の中でやっていますしね。学院でやるべきことはやって、あとは、ちょっと難度の高いことをやっていこうかと。いや、学院の授業の中であまり難しいことをいっても、わかってもらえないんですよ。みんな、芝居観てないし。本も読んでなさそうだし。いや、観てる子もいますよ。意識の高い子も。そういう子を対象にね、もっとぶっちゃけて芝居の話や演技の話がしたいってことです。先生とは違う立場で一緒にやりたいわけです。それが結果的に学生たちのクオリティを上げることになればいいわけですしね。

 なんてことをいろいろ考えられるようになったのも、一年何とかやってこれたからなんでしょうねぇ。そうそう、今週末は金・土・日と連続して3本の芝居と韓国映画を観に行きます! どれもみな楽しみ!

(2004.3.8)


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